攻略本
今週のお題特別編「子供の頃に欲しかったもの」
〈春のブログキャンペーン 第3週〉
子供の頃から自分はゲームが好きだった。
義務教育就学時、祖母からスーパーマリオワールドをプレゼントされた。
勿論ソフトだけである。
スーパーファミコンを持っていなかったので、買ってもらうまでは説明書を熟読していたのだが、スーパーファミコン本体を買ってもらう前に、なぜかスーパーマリオワールドの攻略本を買ってもらった。
その時から、自分は攻略本に魅せられていた。
タイトルゲーム中の全てが一冊の本に書かれている。
攻略法、裏ワザ、敵やボスの一覧。
なんて凄い物が世の中に存在しているのか、ひどく感心した。
それから、順調にゲーマー人生を歩み、家には攻略本がソフトの数以上に増えて行った。
持っていないゲームの攻略本まで、気が付けば買って、読んでからソフトを買うみたいな事までしていたからだ。
成人して社会に出ても、ゲームを卒業するなんて事は無かった。
攻略本以外に攻略WIKIや掲示板を見るようになった程度で、攻略方法を載せた読み物に対する興味は失われることは無かった。
そんなある日、こんな事を言われた。
「本とは、本の中のテーマに対する説明書であり、現実世界の攻略本だよ」
こんな感じの一文である。
なるほどと思った。
ハッとした。
何かが繋がる感覚に襲われた。
現実世界の攻略本。
現実が攻略対象という考え方が、それまで、まるでなかった。
考えてみれば、
子供の頃から、自分は現実世界の攻略本が欲しいとは思っていたが、
現実とゲームは別物と諦めていた。
そんな諦めがあったせいか、不完全な人生の中で、せめてゲームは完全に、完璧にクリアしたいと望んでいた。
だが、それは子供の思い込みで、間違いだった。
現実世界を攻略する為の本は、無数にあり、自分で選ばなければいけないだけで、
ずっと本屋や図書館に並んでいたのだ。
気付いてから、本の読み方が変わった。
フィクションとして読む本が、極端な話、一冊も無くなった。
必ず現実世界の何かを説明し、攻略法を提示してくれている。
そして、本の中にある事は、実践しなければ意味が無い。
攻略本は、ゲームを攻略してこそ意味がある。
データベース自身には意味が無い。
利用して、初めて意味があるからだ。
子供の頃に欲しかったもの。
現実世界の攻略本。
「本とは、本の中のテーマに対する説明書であり、現実世界の攻略本だよ」
の一言で手に入ってしまった。
もっと早く、この言葉に出会っていれば
気付いていれば、
現実の攻略本を読みながら、今も時々そんな風に思う時がある。